さらば「新宿コマ劇場」サブちゃんらから惜別の声

さらば、コマ劇―。故・美空ひばりさんや北島三郎ら大物演歌歌手の公演が行われ、「演歌の殿堂」とされる東京・歌舞伎町の「新宿コマ劇場」を運営するコマ・スタジアムは２８日、今年１２月３１日の公演を最後に劇場を閉館する、と発表した。１９５６年開館で、長年大衆に親しまれたが、近年は娯楽の多様化で入場客数の減少に歯止めがかからず、業績低迷が続いていた。コマ劇ゆかりの歌手からは閉館を惜しむ声が相次いだ。

　国内屈指の繁華街、新宿・歌舞伎町のど真ん中にそびえ立つ「コマ劇」が半世紀余りの歴史に幕を閉じる。

　新宿コマ劇場は１９５６年にオープン。客席は２０８８席で、こまのように回る円形舞台が名前の由来。「演歌の殿堂」の異名を取り、美空ひばりさんや故・村田英雄さんら大物演歌歌手がこぞって座長公演を行った。ほかにもエノケン（故・榎本健一さん）の喜劇、近年では「マツケンサンバ２」が大ヒットした松平健の公演のほか、?原郁恵が主演した「ピーターパン」などのミュージカルの上演も多く、大人から子供まで広く親しまれた。

　ピーク時の７０年代には年間約１００万人、開館以降延べ４０００万人以上の観客を動員。だが最近は入場者数が落ち込み、コマ・スタジアムの今年３月期連結決算は２年連続の純損失となった。そのため同社は東宝の大隈広常務を社長に迎え入れ、経営体制の強化を図る。

　今後はコマ劇場の土地を保有する東宝の支援を受けながら再開発を進める。資産売却で経営再建を図る方針で、東宝は、コマ劇場に隣接し映画館やボウリング場、飲食店が入る「新宿東宝会館」も年内で閉館し、コマ劇場と一体で再開発に取り組む。

　コマ・スタジアムが自社で企画・制作する公演については他の劇場を利用して上演する。

　コマ・スタジアムは梅田コマ劇場（大阪市）を保有していたが、２００５年３月に阪急電鉄に売却。新宿コマ劇場の運営に注力し、経営再建を進めていた。

　コマ劇に併設する小劇場「シアターアプル」や映画館「新宿コマ東宝」も閉館する。５０年を超える歴史の“トリ”を務めるのは、１２月に上演されるミュージカル「愛と青春の宝塚」で、紫吹淳さんら元宝塚トップスターが顔をそろえ「有終の美」を飾る。劇場は来年取り壊されるが、新たな劇場ができるかどうかは白紙だ。

　◆北島三郎　友人と離れるよう
「長年の友人と離れるような寂しさ。長い間お世話になり、一言では言い尽くせないたくさんの思い出があります。名劇場の一つが失われることは本当に残念」

　◆島倉千代子　思い出も消えそう
「昭和４５年（１９７０年）に初めて舞台に出させて頂き、その後も毎年公演させて頂いた頃もありました。本当に思い出深い劇場です。そんな場所が取り壊されると聞いて、思い出も建物も一緒に消えてしまうようで本当に悲しいですね」

　◆細川たかし　芝居勉強になった
「８３年に初出演した時、演歌の大御所がほとんど出ているので、その仲間に入れたことがうれしかった。芝居も勉強させてもらい、歌手生活のよい思い出です」

　◆藤あや子　ステージで冷や汗
「ステージに立った時お客様の顔が全部見える作りにビックリし、冷や汗が出た記憶があります。お客様から見やすく、演じやすい劇場でした」

　◆八代亜紀　「元気の証」だった
「残念で寂しい気持ちになります。新宿を舞台にした歌『なみだ恋』で世の中に出た私にとって新宿という町と新宿コマ劇場はとても強い思い入れがあります。私にとって新宿コマ劇場は“元気の証”といえる場所です。無くなったあともコマ劇場のような伝統的な大衆演劇が楽しめる新しい劇場ができることを心から願ってやみません」

　◆長山洋子　初座長看板見て涙
「９７年に初座長を務めさせていただき、大きな看板を見て涙が出てしまいました。無我夢中で１か月があっという間に過ぎたことが思い出されます」

　◆コロッケ　大スターに憧れた
「大スターの皆さまが出ていたあこがれの劇場。５回も座長公演をさせてもらったので残念でなりません」

参照元：スポーツ報知