「つみきのいえ」積み上げた国内外２０冠…アカデミー賞短編アニメーション賞

　第８１回米アカデミー賞の発表・授賞式が２２日（日本時間２３日）、ロサンゼルスのコダック・シアターで行われ、加藤久仁生（くにお）監督（３１）の「つみきのいえ」が短編アニメーション賞に選ばれた。

　短編アニメーション部門で日本初の快挙を成し遂げた加藤久仁生監督は興奮気味の表情でステージに向かうと、右手でオスカー像を握りしめ「とっても重いですね」と受賞をかみしめた。「サンキュー」を繰り返す中、出た言葉は「サンキュー、ペンシル」。温かみある映像を生み出した鉛筆に感謝したかと思うと、所属会社と米ロックバンド「スティクス」の名曲のフレーズをかけて「どうもありがとう、ミスターロボット！」と叫んで会場の笑いを誘う余裕もあった。

　「つみきのいえ」は、海面が上昇するのに合わせ、家を上に上にと建て増ししてきたある老人が、人生や家族を回想するストーリー。１２分３秒の作品で、制作期間は約８か月。晩年に左半身がまひし、車いす生活を送っていた祖父を思い浮かべながら映像を仕上げていったという。

　昨年６月には世界のアニメ作品が集まる仏アヌシー国際アニメーション映画祭で、短編部門の最高賞を獲得。他にも国内外で高い評価を得て、今回のアカデミーで２０冠を達成した。ナレーションは女優の長澤まさみ（２１）が担当しており「本当におめでとうございます。素晴らしい作品なので、これを機に世界中の人たちに見ていただきたいと思います」と受賞を祝福した。

　子どものころから教科書やノートにいたずら書きをしていたという加藤監督。２００１年に「ＡＬＷＡＹＳ　三丁目の夕日」シリーズを手掛ける映像制作会社「ロボット」に入社し、ＣＭやウェブのアニメーションを制作。０５年にはＮＨＫみんなのうたで、中川晃教が歌う「セルの恋」のアニメーションも担当した。

　授賞式後は「英語がしゃべれないので、シンプルな言葉で。何となく伝えられたかな」と振り返った。「歴史も名誉もある賞で本当にうれしい。日本で待っているスタッフと早く喜びを分かち合いたい」。２５日には都内で凱旋会見に臨む予定だ。

　【助演男優賞　故ヒース・レジャー】故人は２度目　「ダークナイト」で圧巻のジョーカー役を見せつけながら、０８年１月に２８歳で急逝。故人受賞はアカデミー賞史上２度目で、「ネットワーク」のピーター・フィンチ以来、３２年ぶり。ステージには両親と姉が登壇、会場のスターたちも目に涙をためて見守っていた。

　【主演男優賞　ショーン・ペン】万人が平等に　「ミルク」の演技で０４年「ミスティック・リバー」での同賞受賞に続き、２度目のオスカー獲得。今作では同性愛者であることを公言して初めて公職に当選した実在の実物を演じたこともあり、スピーチでは「すべての人が平等になるべきだ」と熱っぽく語った。

　【主演女優賞　ケイト・ウィンスレット】スピーチ練習　ノミネート６度目で念願の主演女優賞を手に。「愛を読むひと」では、戦時中の罪に問われた女性を熱演。過去には受賞を意識し、シャンプーボトルをオスカー像にみたててスピーチの練習をしたこともあるそうで「それが本物になった。興奮しているわ！」と大喜びだった。

　【助演女優賞　ペネロペ・クルス】「最初に気絶」　地元・スペインを舞台にした情熱的なロマンスコメディー「それでも恋するバルセロナ」で初受賞。授賞式のトップで名前を呼ばれると、「私が最初に気絶するのかしら」と天を仰いで受賞を喜び、最後はスペイン語で感謝を叫んで締めくくった。

　◆ボイル監督８冠「スラムドッグ―」　○…ゴールデン・グローブ賞で主要４部門を受賞した「スラムドッグ＄ミリオネア」は、作品賞、監督賞（ダニー・ボイル）を含む８冠。クイズ番組の難問をクリアしながら、不正の疑惑をかけられた青年を通じ、インド社会の現実を描いたドラマ。作品賞の発表では出演者、スタッフら十数人が登壇し、喜びに浸っていた。

　◆ブラピ夫婦受賞ならずアンジー　○…主演男優賞のブラッド・ピット（４５）をはじめ、最多の１３部門のノミネートで注目を集めていた「ベンジャミン・バトン　数奇な人生」は、美術賞、メークアップ賞、視覚効果賞の３部門での受賞にとどまった。また「チェンジリング」で主演女優賞にノミネートされていたアンジェリーナ・ジョリー（３３）は、パートナーのブラピとのダブル受賞も期待されたが、受賞はかなわなかった。

参照元：スポーツ報知